S 198ページの麗人行の5列目(NHK 漢詩紀行、監修:石川忠久・著者:牧角悦子)

「繍羅衣裳照莫春」の読み下しは

「繍羅の衣裳 莫春かがやく」或いは「繍羅の衣裳 莫春に照る」が妥当です。

「衣裳が莫春照らす」では 読み下しの役目をしていません。

 

「麗人行」、杜甫

                この漢詩の読み

三月三日天氣新       三月三日 天気新たに
長安水辺多麗人       長安のすいへん れいじん多し
態濃意遠淑且真       たい こまやかに 意とおく しゅくにして かつ しんなり
肌理細膩骨肉勻       きり さいじにして骨肉ひとし
繍羅衣裳照
春       しゅうらの衣裳 ぼしゅんにかがやく
蹙金孔雀銀麒麟       しゅくきんの孔雀 銀の麒麟
 

四行略

 


就中雲幕椒房親       なかんずく、うんばくのしょうぼうのしん
賜名大國虢与秦       名を賜う、大国 かく と しん と
 

八行略

 


後來鞍馬何逡巡       こうらいのあんば 何ぞ しゅんじゅんせん
當軒下馬入錦茵       けんにあて 下馬して きんいんにいる
楊花雪落覆白蘋       ようか 雪のごとくおちて はくひんをおおい
鳥飛去銜紅巾       せいちょう とびさって こうきんをふくむ
炙手可熱勢絶倫       手をあぶらば熱すべし いきおいぜつりんなり
慎莫近前丞相瞋       つつしみて きんぜんすることなかれ 丞相いからん

 

この漢詩の訳

三月三日(の上巳の節)は 空は爽やかに晴れ上がり、

長安の曲江の水辺には たくさんの麗人が集まる。

姿は あでやかで 心は奥ゆかしい、そして しとやかで自然な美しさ。

肌のきめも細やかに肉付きもちょうどよい端正な女性たち。

刺繍を施した薄絹の衣装は晩春の光に映えている、

そこには金糸で縫った孔雀、銀糸で縫った麒麟が描かれている。

四行略

とりわけ、高い雲のように幾重にも張られた幕(テント)の中にいる皇后(貴妃である楊貴妃)の親族は

虢国夫人、秦国夫人と 大国の夫人になりました(夫人の名前を賜った)。
 

八行略

後から来た鞍馬(宰相の楊国忠)は 何でためらうものか

(楊国忠の乗った馬が楊姉妹の)テントに行き当たって、下馬し、傍若無人(勝手気ままに)に
錦のしとねに入って行く

楊(ヤナギ)の花が雪のように落ちて白い水草を覆い

恋の使いの青い鳥が飛び去っては赤いハンカチをくわえてくる

手をかざせば ヤケドしそうなほどの絶大な勢いを誇る楊家の人々に

うっかり近寄ってはなりません、丞相の楊国忠が目を瞋らせて怒るから。

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*楊国忠と虢国夫人との禁断の愛の場面

*楊(ヤナギ)の花と楊国忠の「楊」がかかっている。

 


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