漢詩についてのワンポイント アドバイス E
「漢詩コラム・花について」
「花」と言えば 私たち日本人は、まず 桜の花を思い浮かべます。満開の桜、そして 散り始める桜に一喜一憂する情緒は
日本独特の感性だと言えるでしょう。しかし、中国の漢詩において「花」と言う時、それが桜を意味することは 殆どありません。
では 中国の漢詩の「花」が何を指すのかと言うと、それはまず、百科の王である牡丹だったり、海棠だったりします。
只、牡丹が中国の漢詩に登場するのは、唐以降のことですので、一般的には「花」と言っても、それが特別の一つの種類の花を
指すことは ありませんでした。ですから、それは 時には「桃」であり、時には「ツツジ」であり、そして 或いは名も無い
山の花だったりします。
杜甫が「落花の時節 又君に逢う」と、詠った花は、春を代表する「桃の花」だったでしょう。
また、<絶句>の漢詩で「山青くして 花燃えんと欲す」と詠った花は、山一面に真っ赤に咲く「ツツジ」だったでしょう。
因みに、日本の春を彩る桜は、特にソメイヨシノの品種が代表的ですが、中国の漢詩で「桜」と言う時は、主に、
「桜桃(オウトウ)」であり、実のなるバラ科の植物と言うことでは「桃」と同類です。
漢詩紀行100選から抜粋
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