F 42ページの兵車行の後ろから3列目。(NHK 漢詩紀行、監修:石川忠久・著者:牧角悦子)
読みと訳の整合性がありません。
「〜 人の收むる 無きを」と読み下したのであれば訳は「誰にも拾われず 転がっているのを」となります。
そして、読みを「〜 舊鬼 哭す」「聲 啾啾」としているのだから 訳は
「泣き叫んでいる」「声が啾啾と聞こえる」となり、それぞれ通釈の部分の 「のを」を取る必要があります。
尤も読みを「聲 啾啾たるを」と読めば、訳の「のを」は必要になりますが、
「君聞かずや」となっておらず、「君見ずや」なので 「人の收むる 無きを」の文句までが、
「〜のを」なのではないでしょうか。即ち、「君不見」がかかるのは 次の一行だけである。
又、「雨湿る」が「ケブル」と読み下していますが 「湿る」には 日本一詳しい大辞林にも「ケブル」の読みはありません。
中国の漢詩の権威の訳 を日本語に訳した場合でも「空が曇り 雨で湿りだす時」の「時」の表現が「環境」となっていますので
「雨でしめりだす時」で良いのではないでしょうか。
降り出し始める時の状況ではないかと思います。即ち、「シメル」です。
尚、「煙雨」の場合は 「エンウ」であり、「ケブル」とも読みます。
今だから言える 当ページを開設するに至った理由と経緯
「兵車行」、杜甫
この漢詩の読み
信知生男悪 まことに知る 男を生むは あしく
この漢詩の訳
本当に分った、男を生むことは悪いことで
反対に 女を生む事が良いことが。
女を生めば となり近所に嫁に出すことも出来るが
男を生めば (戦死して)草ぼうぼうの土に埋まってしまうだけである。
君は見たことが無いか、(あの戦場)青海湖のほとりでは
戦死した人の白骨が 長い間 誰にも拾われずに ころがっているのを。
新たな死者の魂は 恨みにもだえ、昔の亡霊は 大声で泣き叫んでいる。
空が曇り 雨で湿りだす時、 霊魂たちの すすり泣く声が聞こえてくる。
漢詩のトップに戻る