I 68ページの「春夜喜雨」の後ろから2列目。

「湿処」の読みですが、「湿」は、「しめる、或いは うるおう」とは読んでも「うるおえる」とは 読みません。

尚、訳には 「湿った地面とか、地面に落ちた花」とか記されておりますが、これでは 「地に落ちた」とか

「散った花」を連想させ、春の雨を心から喜び、楽しんでいる様子ではなくなります。

この漢詩の内容では 地面や花が落ちた事は 何も言っていません。

訳としては「錦官城の花は 雨でしっとり湿って重たげである」です。

落花は錦官城に重からん」とは言っていませんが。

少し、恣意的な読みではないでしょうか。

 

「春夜喜雨」、杜甫

             この漢詩の読み

好雨知時節       こうう じせつを知り

当春乃発生       春に当たりて すなわち 発生す

隨風潜入夜       風にしたがいて ひそかに よるにいり

潤物細無声       ものを うるおして こまやかにして 声無し

野径雲倶黒       やけい 雲は ともに 黒く

江船火独明       こうせん 火は ひとり 明らかなり

暁看紅湿処       あかつきに くれないの うるおうところを みれば

花重錦官城       花は きんかんじょうに おもからん

 

この漢詩の

好(よ)い雨とは、降るべき時節を心得ていて

春になって こうやって降り始めた。

風に乗って しめやかに、夜になっても降り続け

万物を潤して細やかに 音もなく降りしきる。

野の小道は暗く 垂れ込めた雲はともに黒く

長江を上下する船のいさり火だけが明るい。

明け方に、赤い花が雨で湿っているところを見ると

錦官城(成都)の花は しっとりと湿って 重たげである。

 

 


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