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  「何逡巡」は 反語である、「何ぞ逡巡たる」ではなく、「何ぞ逡巡せん(や)」と読むべきである。

「(楊国忠の乗った馬が楊姉妹の)テントに行き当たって 下馬し、傍若無人(勝手気ままに)に錦茵に入いる」となります。

「当軒下馬」とは、意気揚々、傍若無人のさまです。

即ち、専横を極めた楊一族に対する杜甫の批判からすれば 尤もな表現のように思います。

「麗人行」、杜甫

               この漢詩の読み

簫管哀吟感鬼神       しょうかん あいぎんして きしんを感ぜしめ
賓従雜遝実要津       ひんじゅう ざっとうして ようしんに みつ
後来鞍馬何逡巡       こうらいのあんば 何ぞ しゅんじゅんせん
当軒下馬入錦茵       けんにあて 下馬して きんいんにいる
楊花雪落覆白蘋       ようか 雪のごとくおちて はくひんをおおい
青鳥飛去銜紅巾       せいちょう とびさって こうきんをふくむ
炙手可熱勢絶倫       手をあぶらば熱すべし いきおいぜつりんなり
慎莫近前丞相嗔       つつしみて きんぜんすることなかれ 丞相いからん

 

この漢詩の訳

奏でる笛の音が鬼神をも感動させるほどに悲しく響き

賓客とその従者とが雑踏のように(曲江の)重要な船着き場に満ちて混み合っている

後から来た鞍馬(宰相の楊国忠)は 何でためらうものか

(楊国忠の乗った馬が楊姉妹の)テントに行き当たって、下馬し、傍若無人(勝手気まま)に
錦のしとねに入って行く

楊(ヤナギ)の花が雪のように落ちて白い水草を覆い

恋の使いの青い鳥が飛び去っては赤いハンカチをくわえてくる

手をかざせば ヤケドしそうなほどの絶大な勢いを誇る楊家の人々に

うっかり近寄ってはなりません、丞相の楊国忠が目を瞋らせて怒るから。

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*楊国忠と虢国夫人との禁断の愛の場面

*楊(ヤナギ)の花と楊国忠の「楊」がかかっている。

 


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